人気急上昇!ジャンプの学習漫画が低年齢層読者を惹きつける理由とは
「週刊少年ジャンプ」編集部(集英社)が本気で作った学習漫画雑誌「勉タメジャンプ(べんためジャンプ)」。ワクワクしながら学べる学習漫画雑誌として4月に発売されると、大きな反響を呼んでいる。雑誌を立ち上げたのは『Dr.STONE』などの連載を担当していた「週刊少年ジャンプ」の本田佑行副編集長で、7月13日の第2号発売前に雑誌の制作意図や反響、学習漫画の面白さなどを聞いてみた。
【画像】『Dr.STONE』作者描く!夏休みの自由研究にピッタリな『勉タメジャンプ』
「勉タメジャンプ」は、小学生にもわかりやすい知識や学びが自然に盛り込まれ、純粋なエンターテインメントとしての面白さも兼ね備えている一冊で、大人の好奇心もくすぐられる「ジャンプ」らしい学習漫画雑誌になっている。
漫画の連載陣は、Boichi氏(『Dr.STONE』作画担当)、田村隆平氏(代表作『べるぜバブ』『灼熱のニライカナイ』)、長谷川智広氏(『青春兵器ナンバーワン』『森林王者モリキング』)、古舘春一氏(『ハイキュー!!』)、レツ氏(『現存!古代生物史 パッキー』『れっつ!ハイキュー!?』)、川口勇貴氏(『レッドフード』)と、「週刊少年ジャンプ」だからこそ実現した人気作家陣が集結した。
■小3&小1の我が子がきっかけで誕生「親として人生のギフトを渡したい」
――学習漫画雑誌を制作することになった経緯を教えてください。
【本田】 僕自身、小3と小1の息子と娘がおりまして、いつも子どもたちと書店さんに通っているのですが、子どもたちに学習漫画を買ってあげたいなと思って学習漫画のコーナーに行きますと、本当にたくさんの学習漫画が並んでるんですね。
それこそ、どれを選べばいいのかわからないくらい。買って子どもたちの趣味に合わなかったら困るしなぁ、でもこの大量の学習漫画の中から一つを選ぶのも難しいなぁ、と考えた時、「あ、学習漫画の雑誌を探せばいいんだ」と思い至りまして、雑誌を探してみたんです。
雑誌なら、一冊買えば色んな学習漫画が載ってるでしょうし、その中から気に入るものがあればいいですから。迷っている親的には、買い与えるのにピッタリです。で、意気揚々と探してみましたら、学習漫画だけを集めた雑誌というものが、少なくとも僕が探した範囲では見当たらなかったんですね。「それなら自分が作ってみたいな」と思ったのが最初のきっかけです。
――なるほど。お子さんがきっかけで誕生したんですね。
【本田】 学習漫画は僕も幼い頃からよく読んでいましたし、大好きでした。たかしよいち先生吉川豊先生の『まんが化石動物記』や『まんが世界ふしぎ物語』なんか、本当に何度読んだかわからないですね。学習漫画って、参考書と比べたら明日すぐに授業やテストに役立つとかいうものではないと思うんですが、「知りたい!」「気になる!」「そうなんだ!」というワクワクした気持ち、好奇心に対する前向きな気持ちを残してくれるんですね。大人になってずいぶん経つ今になって考えると、むしろ人生を前に進めてくれたのは、学習漫画が残してくれたそういう気持ちだったと思うんです。
親として、自分の子どもに何か一つでも多くの人生のギフトを渡したい、と考えた時、学習漫画というのはとても意味を持つものなんじゃないかなと思います。自分のこれまでの編集者としての経験が、そんな「学習漫画」という素晴らしいジャンルをより豊かにするほんの少しのお手伝いになるのであれば、こんなすてきな事はないなと、素直にそう思いました。
――学習漫画雑誌を制作することになりますが、普段の漫画誌制作とは違ったと思います。
【本田】 もちろん、これまで多くの方がたくさんの素晴らしいアプローチをしてきたジャンルですので、何かのはっきりした難しさがあって、現状で<学習漫画の雑誌>というものが表に立っていない、という事も容易に想像がつきました。ただ、少なくとも僕はほしいと思ったわけですから、需要自体はゼロじゃないはずだ、と。それなら、まずは作ってみて、そこから色んな試行錯誤を始めてみても良いんじゃないかな、と思いました。
僕は「週刊少年ジャンプ」編集部に所属していますが、幸いなことに、編集部の雰囲気としても新しいチャレンジを歓迎してくれるところがありまして、上司に相談してみましたら、2つ返事で背中を押してくれました。「少年ジャンプ」グループとしても、どうやって今よりもさらに多くの低年齢層読者にアプローチしていくのか、というのはずっと継続している問題意識でもありましたし、「ジャンプ+」や「最強ジャンプ」や様々なアニメ化作品などを経て、「少年ジャンプ」的な考え方や作り方に対する裾野も、僕たち編集者自身の中で広がってきている、という部分もあったと思います。
そう考えていきますと<親としての><編集者としての><少年ジャンプとしての>という、色々なタイミングや思惑が奇跡的にピタッとハマったからこそ始める事ができた雑誌、という感じがしています。
■ジャンプが得意な「素晴らしい作家さん達と、新しい漫画を作る」 子どもたちのために…作家陣が協力的
――漫画雑誌を新たに作り出す以上、看板となる漫画作品、それを描く作家さんの協力は不可欠です。協力してもらう作家探しも大変だったと思います。
【本田】 「週刊少年ジャンプ」が学習漫画の雑誌を作らせていただく、と考えた時に、我々ができる一番の事はなんだろうか、と考えました。
学習漫画は本当に歴史が長く、学習雑誌という側面でも、各社素晴らしい雑誌の先輩たちがたくさんいらっしゃいます。先輩たちが魅力的な誌面を作られている中で、ノウハウもない新参者がおいそれと戦えるわけもありません。そういう時、まずは自分たちができる一番得意な事から始めていくべきなんじゃないかなと、個人的には思っています。
自分たちができる一番得意な事、「週刊少年ジャンプ」にとってそれはとにかく<素晴らしい作家さん達と、新しい漫画を作る>というその一点に尽きます。それなら、まずは自分がお声がけできる中で最高だと言える作家さんに、ダメ元でもお声がけしてみるべきだろう、と。何よりただただシンプルに、子どもたちには一番良いものを読んでほしいと思いました。
そうして恐る恐る先生方にお声がけさせていただくと、こちらの想像以上に多くの先生が「それは面白そう!」とおっしゃって下さいました。もう、涙が出るほどありがたかったです。理由はいくつかあるように思いますが、元々少年誌で活躍されていた先生方ですから、子ども達にもっともっと楽しんでほしい!という気持ちが非常に強かった、というのが一つ。もう一つは、先生方自身が好奇心の塊のような人たちで、新しいチャレンジに対して非常に前向きだったという面があるように思います。そうした一連の流れの中で、第1号に掲載させていただいた顔ぶれになっていったという感じです。
――本田さんは科学漫画『Dr.STONE』の連載を担当しておりました。企業と協力して科学実験のイベント開催もあり、作品を通じて科学に興味を持った読者は大勢いたと思います。連載当時の反響はどういったものがあったのでしょうか?
【本田】 多くの方に読んでいただけて、さらに「面白い!」と言っていただけて、本当にうれしかったです。『Dr.STONE』は学べるから良い作品というわけでは決してなく、その内容がとても面白いからこそ、皆さまに読んで楽しんでいただけた作品なんだと思います。主人公である千空というキャラクターを「カッコいい!」と読者が感じて下さるとき、その千空が持つ「地道な努力」や「多くの知識」にカッコ良さを感じて下さっているわけで、千空のその心は、彼が一番大切にしている「科学」が育んでくれたものです。千空のカッコ良さの向こうに、それを育てた科学のカッコ良さを見る。そういう科学との関わり方を『Dr.STONE』はできていたと思いますし、そこに多くの読者の方が反応して下さったのではないでしょうか。
■読者のワクワク大切にする「ジャンプ」 「子どもの知的好奇心を刺激」に注力した「勉タメジャンプ」
――今回の学習漫画雑誌「勉タメジャンプ」含めて、読者に学びを与える漫画制作において気をつけていることはどこでしょうか。
【本田】 「読者に学びを与える」という部分が、ちょっと僕の感覚と違うかもしれません。むしろ、読者と一緒に面白そうな事を探しに行く、という感覚です。
「勉タメジャンプ」に掲載させて頂いた作品は、どれも「子どもたちに学ばせたいものとは!?」というような視点からはあまり始まっていないように思います。基本的にはすべて、先生方とお話する中で、先生ご自身が興味があったこと、知りたかったことを聞き取って、そこからお話やキャラを広げていく形を取りました。
それは「週刊少年ジャンプ」で作る、普通の漫画の作り方と基本的には変わりません。バトルにワクワクする、ファンタジーにワクワクする、スポーツにワクワクする、先生方のそのワクワクが形になってそれぞれの作品が出来上がります。今回の場合は、そのワクワクを<子どもの知的好奇心を刺激する>部分に絞った、というだけの感覚です。学習漫画の持つワクワクも、少年漫画の持つワクワクも、根っこはきっと同じもので、だからこそ僕たちが学習漫画を作らせていただく意味があるのではないか、と思っています。
もちろん、だからといって荒唐無稽に作っていいというわけではありません。子ども達が触れるものですから、責任を持って、たくさんの監修の皆さまにご協力いただいています。でもそれは、発想や面白さを制限するためのものではなくて、逆にそれを教えてくれるもの、支えてくれるものだと感じています。興味を持った物事に対して、色んな事を知る事ができるのはとてもとても楽しく、ワクワクする事です。監修の方々を通して、学習漫画で感じるそういう面白さを、作り手である僕たちも感じることができたように思っていますし、だからこそ、いつものジャンプ作品と同じように、子ども達に「ね!僕たちが面白いと思ったもの、面白くない!?」と語りかける事ができるんじゃないかな、と思っています。
――2023年に3回の刊行を予定していて、1冊目が発売されました。読者からの反応とともに、編集者から見て、漫画から“何かを学ぶ”必要性や制作する点での面白さを教えてください。
【本田】 子どもが楽しんで読んでくれた、というお母さんお父さんのご感想を様々伺いまして、本当にありがたい限りです。また、次はもっとこういうものが読みたい、もっとこうしてほしい、などの次に向けての貴重なご意見もいただけて、身が引き締まる思いです。まだまだ発売されたばかりで、ご存知ない方もたくさんいらっしゃる雑誌かと思いますので、より多くの方に手に取っていただいて、反応をさらにたくさんいただけたらうれしいですね。
学習漫画が持つ力というのは本当に大きいと思います。今回関わらせていただいて、さらにそれを強く感じました。学びを与える、というわけではなく、学ぶという行為そのものの豊かさや楽しさを教えてくれる、そんな根っこの強さを持っているものではないでしょうか。
これも先ほどもお話しましたが、知らない事を知っていく、という面白さは読む側も作る側もまったく同じですので、先日ようやく2号を作り終わったのですが、こちらも1号以上に楽しかったです。夏発売の号という事で、自由研究を大特集しましたが、調べれば調べるほど自由研究はめちゃくちゃ面白かったですね。この自分が感じた面白さを、早く読者の皆様へも見ていただきたいとワクワクしています。
2号は自由研究にそのまま使える特別付録「勉タメ夏休み結晶実験キット」や、その結晶実験を題材にした付録連動の読切漫画『バケル』(大須賀玄・著)、総力特集・自由研究、さらに裏特集として「闇の自由研究」という記事も用意しました。『Dr.STONE』でも科学監修をして頂いたくられ先生に、学校ではなかなか聞けないような科学の知識を紹介いただいています。ぜひ7月13日発売の2号もご注目いただけるとうれしいです!
■『勉タメジャンプ 2023 SUMMER』情報
発売日:7月13日(木)
価格:1290円(税込)
ページ数:246ページ
(出典 news.nicovideo.jp)
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